乱視(多焦点)

乱視とは

通常角膜や水晶体はきれいな円弧を描くようなカーブを保っています。しかし、これが何らかの理由で歪んでしまい、ラグビーボールのような状態になってしまうことがあります。こうなると角膜から水晶体を通った光は一か所で焦点を結ばず、網膜に写る像は二重になったりぼやけたりしてしまいます。これが乱視です。

乱視用眼内レンズとは?

白内障手術の後で患者さんの裸眼視力にもっとも影響を与える要素の一つとして乱視の矯正の問題があります。少し前までは乱視の強い患者さんは白内障の手術後も眼鏡を使用しなければなりませんでした。そこにトーリック眼内レンズという、乱視を矯正する機能をもったレンズが登場しました。このレンズを使用することによって、乱視の強い方でも、手術後の視力の向上が期待できます。
このレンズは乱視を矯正するための非球面レンズで、矯正の程度によって何段階かの強度があります。乱視用単焦点レンズは保険適応ですがオーダーメードではなく既存の度数から選択する形になります。高い精度の結果を求めたり、裸眼での生活を希望される方はフルオーダーでの乱視用多焦点眼内レンズをお勧めいたします。
保険適応の乱視矯正について以下お話しします。保険の白内障手術費用は日本で一律決まっていてその費用内でレンズも用意しなければならないため、通常のレンズに比べかなり高額になる乱視用の眼内レンズを使用することは完全に医師の善意によるものであることが現状です。こういった現状からクリニック側で費用を負担し利益が減少するため、使用を控えられていることが多くあります。当院はそのような中、多くの乱視用眼内レンズを使用しております。
乱視適応の患者様に乱視用のレンズを入れてあげるという、費用を気にしないで本来の医師としての純粋に良い医療を行う努力が必要です。
ここで一つ、たまに乱視に関して大きく誤解している患者さんがいますので軽く解説をしておきます。
乱視には角膜乱視と水晶体乱視という大きく分けて二種類のものがあります。水晶体乱視は白内障手術そのものを行うだけで治ります。逆に角膜乱視は目が歪んでいるため白内障を取っただけでは治りません。
『先生!私の乱視を治してください!』こういった願いを叶えてあげられない場合が3パターンあります。
一つ目は患者さん自身が乱視と思っているものが乱視ではないこと。患者さんは老眼や近視を乱視と勘違いしている方が多くいます。
二つ目は乱視の度数が軽度の場合は白内障手術では治せません。保険で認められている乱視矯正は1.0Dという乱視からです(選定療養対応の多焦点レンズでは0.5Dから)。しかも0.5刻みでの精度でしか減らせません。あくまで乱視用レンズは1.0以上の乱視を軽減するもので乱視を取るものではないことを理解する必要があります。それ以下の乱視の方は非常に多く存在し、乱視があっても乱視用レンズは使用できません。
三つ目は乱視は年齢で変化します。年齢を重ねると直乱視というものから見づらい倒乱視というものに変化していきます。今から減るべき乱視を矯正してしまうとかえって強い乱視を将来招いてしまう可能性があります。
こういった内容を患者さんがどれだけ理解することができるでしょうか。だからこそ医師に任せる必要があると私は思います。同時に単焦点レンズの場合は乱視や屈折誤差をメガネで補正する必要があることを必ずお話ししております。

日本の現状として乱視を矯正レンズはクリニックが費用を負担するという使用しづらい状況にあり、医師の善意で使用されているということ。
このような状況では物価高の現状日本でまず増えることはないと思います。保険で乱視加算のようなもので費用を補填してくれるようになれば全国的にも増える可能性はありますが、医療費を削減していく方針の中では難しいのが現状です。

乱視用眼内レンズ白内障手術の手術方法

基本的には普通の白内障手術と同じ手順になりますが、乱視用のレンズには向きや方向があります。乱視の軸方向とレンズの方向をあわせるために手術前に角膜にマークをつけ、位置合わせをおこなっていましたが、現在はデジタルで適切な方向を決めることが可能となりました。

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